Follow us!

Facebook Twitter
TOP > 特集・連載一覧 > あの店、企業の表品開発

企業の商品開発 おいしい料理、発想の原点
大繁盛店に共通する要点は言うまでもなく「おいしい料理」にある。それは味であり、品質であり、ボリュームであり、何より価格以上の価値を指す。本特集は商品開発に携わる10人のプロフェッショナルに発想の原点を聞いてみた。
 
 

品質維持と作業工程の合理化を両立することが開発の要

 フード・ドリンク全品280円均一の焼き鳥業態「鳥貴族」。1986年に大阪府東大阪市・俊徳道で創業。創業当初は150円、250円、350円のスリープライスを採用していたものの、創業1年後に均一価格(当時は250円均一)にリニューアルしたことが繁盛店への足掛かりとなった。以来、大阪府内を中心に直営・フランチャイズ(FC)店の両輪で堅調な出店を重ね、20店舗体制を越えた頃から出店ペースを加速。40店舗体制となった2005年には関東にも進出を果たし、2008年には100店舗、2011年には200店舗体制を実現。2012年3月末時点で271店を展開し、1000店舗体制に向けて邁進している。

――店舗数が250店を突破し、まさに快進撃が続いています。その原動力のひとつとして高い商品力があるのは間違いないと思いますが、商品開発は何名で行なっていますか?

 開発部商品開発課は2名体制です。とはいえ、2名ですべての商品を開発するのは当然不可能なので、メーカーさんと協力して開発を進めています。現在は毎回10~20社のメーカーに参加いただいており、年に2回、約200品の提案を受け、その中からオンメニューするアイテムを絞り込んでいく形です。

――メーカーとの共同開発の流れに関して重視視していることはどのような部分ですか?

 まず、メーカーさんにお願いするのは、「鳥貴族のコンセプトを理解した上で提案をいただきたい」ということですね。すなわち、鳥貴族は居酒屋ではなく焼き鳥店であるということ。具体的には、魚料理や揚げ出し豆腐などいわゆる居酒屋メニューは弊社では採用しません。同じ一品料理であっても、鶏のダシを使っていたり、食材として鶏肉を使用していたりと「焼き鳥店ならではの強み」が発揮されている料理を求めています。かつては提案に40社近くに参加いただいたこともありましたが、その中から弊社のコンセプトを深く理解していただいているメーカーさんに絞って、継続して参加を呼び掛けています。
 また、提案に際しては「単純な自社製品の提案ではなく、いかに自社製品を鳥貴族のメニューに落とし込むか」を重視してもらっています。毎回200品前後が提案されますが、メニュー化に向けてフィードバックが進んでいくのはおよそ30~40アイテムといったところでしょうか。鳥貴族は20代~30代のお客さまが主客層ということもあり、味のはっきりしたものや、使用されている食材がお客さまからもイメージしやすいものが採用されやすい傾向にあります。一方で、お客さまによってあまりに好みが分かれるような食材や味付けが尖りすぎたものは求められていません。「わかりやすい中にも焼き鳥店ならではの個性が光るメニュー」が鳥貴族のメニュー開発の基準なのです。

――メニューが導入されるまでの流れを教えてください。

 提案されたメニューは商品開発会議にかけ、そこで審査を重ねていきます。コスト面やオペレーション、食材の変更などを経て、最終的には担当部長である私が決裁し、オンメニューしています。以前は現場スタッフも商品開発に参加していましたが、時間的な制約などもあり、現在はほぼ開発部が主導的に行なっています。もちろんメーカーさんとの共同開発だけではなく、開発部として開発を担当する商品もありますし、社内から出てきたアイデアを使うこともあります。最近では「新トリキの唐揚げ」がそうですね。これは、「鶏のプロである焼き鳥屋としてどこにも負けない唐揚げを作ろう」という代表取締役の大倉(氏)の号令のもと時間をかけて開発したもので、この4月からオンメニューしています。従来の唐揚げは串焼きのタレを流用していたのですが、今回は唐揚げ専用のタレに漬け込んで揚げています。「新トリキの唐揚げ」に関しては、開発部として数種類を社内へ提案し、最終決定しました。

――280円という枠の中でお客さまを惹きつける商品を提供するために必要なことはなんでしょう?

 売価が決まっており、そこから逆算して食材や調理法を選択していくという点ではやりやすい面もあります。弊社では原価率についてはおおよその規準を設けていますが、ではどの商品もその原価率に収めておけばいいというわけではありません。目玉商品には思い切って原価をかけてお客さまにお値打ちを訴求する必要があります。例えば、うちの看板商品である「もも貴族焼」などは原価率の基準を大幅に超えていますし、今回の「新トリキの唐揚げ」もそうです。要は、メニューミックスによるバランスが肝心だと思いますね。調理においても同様です。PB商品や市販品を活用して効率化を図る商品がある一方で、鳥貴族の看板商品である串焼きは手間がかかっても店舗で串打ちすることでフレッシュでおいしい状態でお客さまに提供しているのです。

――いま、PB商品のお話が出ましたが、現在使用しているPB商品はどのようなものになりますか?

 PB商品はドレッシングやタレの類が中心ですね。「トリトリチーズ」に使うチリソースや、サラダ用のワサビソース、キャベツ盛りのタレ、みぞれソースなどです。PB商品のメリットはやはり店舗オペレーションをシンプルにできることと、ロットの問題が大きいですね。メーカーの既製品ですと、商品の規格が大きすぎて店舗のロスにつながってしまうリスクがある。とくにうちの場合は店舗規模が40~150席と幅広いので、小ロットで使用できるPB商品が必要となります。PB商品に関しても、基本的に商品開発部が窓口になって各メーカーさんとのすりあわせを行なっています。現在は、対メーカーとの価格交渉、さらに現場との折衝まですべて商品開発部が担っているので、今後、商品開発部がより自社開発に傾注できる体制を採ることは必要になってくるかもしれません。

――商品開発をする上で難しいポイント、あるいは今後の課題として捉えていることはありますか?

 これはどこの企業でも同様だと思いますが、やはり商品開発の過程においては、現場からはどの商品に対しても「作業工程を少なくしてほしい」といった意見が出されます。仕込み、そして営業中のオペレーションともに少しでも簡略化したいという現場のニーズは理解できるのですが、そこでひと手間を惜しまないことが差別化の要因になってくるわけです。先ほども申しましたが、手間をかける商品とオペレーションを重視する商品のメリハリをつけて、「他の居酒屋ではできない」「他の焼き鳥屋ではできない」「他の均一価格業態ではできない」、鳥貴族ならではのメニューを開発していかねばなりません。また、メニューは焼き台、フライヤー、コンロでの調理が中心で、標準設備である電子レンジを上手に活用できていない現状があります。電子レンジを調理にも活用することで、調理法の幅を広げていかなくてはならないと感じています。

――今後、とくに強化していきたいメニューなどはございますか?

 まず、唐揚げに関しては鳥貴族の新たな看板メニューのひとつとなるように今後もブラッシュアップを続けていくことになるでしょう。他にも、たとえば「チキンカツ」など、鶏専門店の強みをわかりやすく訴求できる目玉商品の開発には力を入れていきたいです。また、これも商品開発をする上での継続的な課題なのですが、「創作串カテゴリー」においていかに個性を発揮し、リピーターのお客さまを飽きさせない仕掛けを作れるかどうか。創作串カテゴリーはグランドメニュー改訂ごとに2~3アイテムを入れ替えて目新しさを演出しています。使用する野菜やソースで季節感を表現しつつ独創的な創作串を提案していきたいですね。

「鳥貴族」の売れ筋上位6品

DATE

㈱鳥貴族
大阪府大阪市浪速区立葉1-2-12
TEL:06-6562-5333
設立:1986年9月19日
資本金:6598万4千円
店舗数:271店舗(直営137店舗、FC134店舗/2012年3月末時点)
年商:79億円(直営)
従業員数:約3200人(PA含む)
http://www.torikizoku.co.jp/

 
 
特集一覧に戻る