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企業の商品開発 おいしい料理、発想の原点
大繁盛店に共通する要点は言うまでもなく「おいしい料理」にある。それは味であり、品質であり、ボリュームであり、何より価格以上の価値を指す。本特集は商品開発に携わる10人のプロフェッショナルに発想の原点を聞いてみた。
 
 

店舗調理が味の決め手。味入れ・調整は現場の仕事です

 イタリアンバール「バルザル」6店を主力として展開する㈱オベーションプラス。「バルザル」の客単価は2200円で推移するが、三宮店は全品99円均一の串揚げ、六甲道店は鉄板焼き、天満店は炉端を打ち出し、店舗ごとに看板商品をつくりあげ集客のマグネットとしている。この他「トラットリア酒場ピグポッテ」、ダイニングレストラン業態の「リベラルオリエンテ」「リゼルバ」など3業態10店舗を展開する同社の商品開発の経緯に迫った。

――現在3業態を展開してしますが、メニュー開発はどのように行なっていますか?

 開発は大きくわけて2通りあります。ひとつは本部が商品のイメージを伝えて現場に開発を委ねるスタイルです。もうひとつは店舗スタッフによる自発的な商品開発を常に受け付けています。現場はお客様の声や地域性をもっともよく知っていますし、後者のほうがヒット商品につながることが多いように感じます。これは販促等にも関わってくることなのですが、やはり現場スタッフとしては、「自分が考えて作った商品」に対しては愛着もあり、なるべくたくさんのお客様に食べていただきたいと思う気持ちがモチベーションにつながっているようです。

――具体的には、どのようなフローで現場から提案されるのですか?

 当社では、セクションごとに3人の総料理長を置いており、まずは各スタッフから総料理長へ書面での商品提案・レシピ提案があり、ユニークなものに関しては総料理長から本部へと上がってきます。書面段階で一度判断をした後に、社内で試食会を開催し、他のスタッフの感想やアドバイスを参考にしながら商品のブラッシュアップを図ります。また外部オブザーバー(ブロガーなど)を招いて試食会を開催し、その意見を参考にすることもありますね。最終的なゴーサインは本部が判断し、まずはスポットメニューやおすすめメニューで登場させ、売れ行きが好調な場合は年に2度のメニュー改訂の際にオンメニューする形が一般的です。

――商品開発にあたって重視する点は?

 当社では「相対的なコストパフォーマンス」を重視しています。とくに主力業態である「バルザル」「ピグポッテ」など客単価2000円前後の業態においては、商品力だけではなく価格力もお客様が店舗を選ぶ重要なファクターになっています。「価格以上のお値打ち感」をいかに伝えるかを大事にしています。また、いま傾注しているのは看板商品の開発ですね。他店を視察した際にも痛感するのですが、やはり「キラーコンテンツがある店は強い。例えば、現在バルザルでは立地に応じて炉端焼きや串焼きなどの店舗独自のメニューを提供していますが、このような“店の強み”をより大胆に追求していかなければならないと感じています。

――商品の原価コントロールに関してはどのようにお考えですか?

 原価に関してはとくに上限を設けてはいません。売価決定に関しては厳密に社内でルールを設定しているわけではなく、先ほどもお伝えした「相対的なコストパフォーマンス」を重視しつつ、地域性などを考慮しながら価格を決定しています。例えば「バルザル」においても「10%~100%」と幅を持たせており、メニューミックスで全体の原価率を32%に収めています。300円均一のタパスメニューの中には100%に達するものがあるものの、もともと粗利の低い商品であるので、お客様にコストパフォーマンスの良さを訴求するための集客フックとして活用しています。

――商品をおいしく提供するために必要なことは何でしょうか? 管理方法などに特徴があるのでしょうか?

 まず基本的なことですが、それぞれの食材を適した状態で管理すること、また鮮魚などに関してはなるべくその日に売り切って、フレッシュなものをお客様に提供することです。現在は仕入れに関して現場スタッフの経験と勘に任せている部分がありますが、5月よりインフォマートを導入し本部で管理する体制に移行します。
 また外食店である以上、店舗で調理する手間を省いてはならないと思いますね。一次加工の段階においては、企業として効率化に取り組んでいきたいと考えていますが、最終的な味入れ、調理については店舗ですべて行うのが理想と捉えています。やはり、その部分が店舗の個性につながりますし、現場スタッフにとっても「自分が料理を作ってお客様に提供している」というモチベーションにつながりますよね。私がイメージするのは、「餃子の王将」さん。ベースのメニューは一緒でも、それぞれの店で味やオリジナルメニューに個性があり、それが大きな魅力になっているというものです。

――いま、一次加工のお話が出ましたが、具体的にセントラルキッチン(CK)の設置やPB商品の開発は進めていますか?

 CKに関しては、現状の規模では必要性は感じていませんが、PB商品はまさに開発を進めている段階です。いま取り組んでいるのはトマトソースとブイヨンです。トマトソースはイタリアから輸入した本場のトマトホール缶を使用したものを開発しています。非常に使用頻度が高いものなので、これは高いレベルでの均質化を図っていきたいと考えています。そしてもう1点、現在はどの店舗でもツーオーダーでソースを手作りしていますが、麺茹でとソースを同時に作業するとどうしても厨房内の作業効率が悪くなるので、トマトソースのPB化を通じて現場オペレーションを効率化する狙いもあります。
 ブイヨンに関しても同様です。現在は顆粒のものを使用していますが、ガラからしっかり煮出したフレッシュなものを、1kgに小分けした真空冷凍パックにしたPB商品を導入する予定です。ただ、先ほど話したように店舗で手間をかける余地は残しておきたいので、ブイヨンもプレーンな状態でパック化し、最終的な味入れ・調整は店舗で行います。

――今後もPB商品は増やしていく方向で考えておられるのでしょうか?

 そうですね、基本的にはその方向で考えています。優先順位としては、ロット数が確保できるもの・使用頻度が高いものから優先的にPB化を検討していくことになると思います。現場から上がってきている具体的な要望としては、ドレッシング&ソース類全般、タバスコや七味のような調味料、汎用性の高いブレンドスパイスなどですね。PB商品の開発やメニュー開発などに活用するため、将来的にはテストキッチンを確保することも必要だと感じています。
 PB商品に関しては、もちろんスケールメリットによるコストダウンも念頭に入れていますが、それよりもむしろ商品力の向上をめざす部分が大きいです。トマトソースやブイヨンのような料理のベースとなる部分を高いレベルで安定させつつ、その上で現場スタッフが独自の個性や創造力を発揮していく体制を作りたい。弊社のメリットだけに留まらず、お客様にも「おいしい」「コストパフォーマンスが高い」などの形で、還元していかなければいけないと考えています。

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DATE

㈱オベーションプラス
兵庫県神戸市中央区北長狭通2-6-6 ヤナセビル302
TEL:078-381-5774
設立:2006年6月15日
資本金:500万円
店舗数:直営8店舗、FC1店舗、プロデュース店舗1店舗
企業年商:3億8000万円(平成24年5月末決算見込み)
従業員数:約100人(社員20名、PA80名)
http://ovation-plus.com/

 
 
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